幸せの残量─世界と君を天秤に─
かろうじて首は動かせたので、振り向くと。
「いや、何してんですか巧さん」
寝ていたはずの巧さんが私に寄りかかっていた。
寄りかかっていたというか何だこれ全体重がかかっているんじゃないか。
「重たいです」
切実に訴えれば、
「……ん」
最早声も出せないのか。
ならば何故ここに来たんですかと問いたい。
「巧さん。…巧さーん?」
「うるさ、い……」
耳元に触れる掠れた声。
肩から下がる腕は熱を帯びていて。
寝ていたせいか、乱れている髪。
……なんかこう、欲情した。
なんて不埒な思考が横切った。
だって私は悪くないんだよ。悪いのは全面的に大人しく寝ていない巧さんだ。