幸せの残量─世界と君を天秤に─
「あ、水上、いいところに!」
廊下を歩いていると地学の先生に呼び止められた。
「何ですか?」
「ちょっとこの資料を職員室に運んでおいてくれないか」
床に置いてある段ボールを指差す。
地図とか入っているみたいだ。
「はあ…いいですけど」
「よかった!じゃあ頼むなっ」
そう言い残して先生は去っていった。
病気のこともあって、こうしたことを頼まれることはなかなか無いんだけれど、随分急いでいたみたいだから。
内心ちょっと嬉しくなりながら段ボールを持ち上げた。
「職員室だったなー」
小さく呟いてから歩き出した。