幸せの残量─世界と君を天秤に─
「まあ、いいです。私はもう一度寝ます」
ふわぁ…と欠伸をしながら目を閉じた。
中途半端に寝たものだから眠くて眠くて。
「たくみさんも、寝てくださいね」
まだ熱があるんですから。
「ん…」
「あ…たくみさん……」
「なに」
「ぎゅってしてください」
キスは大人しく諦めますから。
「ん」
背中に腕が回り、抱き寄せられる。
頭が丁度巧さんの首あたりにきたから擦りよってみた。
「擽ったい」
「いいじゃないですか」
「……まあ、」
もう一度抱きしめられて、そっと鎖骨に口付けた。
起きるころにはきっとまた、いつもの日常に戻るでしょう。
こんな些細な出来事が、特別で、特別で、とてつもなく平凡で。
愛しい、時間。