幸せの残量─世界と君を天秤に─
「じゃあ今日もここに帰ってきます」
「ん」
あれ、そういえば最近実家にいるより巧さん家にいる時間の方が長いな。
…今日は泊まらないでおこう。
「おい」
「はい?……っ」
「ったくガキ」
思わず唇のすぐ横を指で触れた。
「ちょ、言ってくれれば自分で取れますっ」
そんな身を乗り出して舐め取らなくても。
「この方が早い」
「あいらぶ、ゆとり」
私はゆとり教育世代なんですよ。
「台形の面積の求め方習わなかったんですから」
「習っても覚えないくせに」
数学は私の敵です。