幸せの残量─世界と君を天秤に─
『どうして医者になったんですか?』
その言葉に不自然なところなんてなかった。
会話の流れで、ふと思ったことを言っただけなのに。
……なにこの凍り付いた空気。
巧さんの動きが急停止したかと思うと、段々周りが冷たくなっていった。
「あの、巧さん?」
「……」
どうして無言なんですか。
やっと動いたかと思うと、黙々と朝食を食べ進め始めた巧さんは、まるで早くこの時間を終わらせようとしている様で。
「……」
「……」
なんとなく、話しかけづらい。