幸せの残量─世界と君を天秤に─
今日は何をしていても。
いや、むしろ何をしていたかも分からないくらい、淡々と時間は過ぎて。
ふと意識した時には、もう放課後になっていた。
って、これじゃあ何しに学校へ行ったのかわかんない。
何を思って学校に来たのかも覚えていない癖に。
「亜優美、一緒に帰ろ?」
「……うん」
正直、ひとりで帰りたい気がしたけれど。
でもきっと、独りでは巧さん家には行けない気がして。
柿崎のそうやってさりげなく気遣ってくれるところに、何度助けられただろう。
校門を出て、駅まで歩いている間も柿崎はずっとお喋りを続けてた。
「――…は…どう?」
「……」
「亜優美、聞いてる?」
「え?あ、もちろんじゃないか」
聞いてなかったに決まってる。
「ふーん…じゃあ何の話してた?」
「深海魚の生態について」
「……深海、行かせてあげようか?」
「スンマセン」
ああ、視線が。視線が冷たい。