幸せの残量─世界と君を天秤に─
柿崎は仕方ないとでも言いたげにため息を吐くと、再び口を開いた。
「だから、明日家に遊びに来ないかって」
「柿崎ん家に…?」
柿崎の家に遊びに行ったことはない。
柿崎だからって訳じゃなくて、今までも友達の家には行ったことがない。
…突然発作が起きたら迷惑がかかるから。
そうやって断る内に、誰も誘わなくなったんだけど…。
「…用事、ある?」
「、…ううん、ない」
…最近は落ち着いてるし大丈夫かな。
一瞬巧さんのことが頭を過ったけれど。
別に、毎日行ってるわけじゃないし……。
「…行く」
「ホント!?じゃあ、また明日ね!」
そう言って手を振って去っていく柿崎に、既に駅前にいたことに気が付いた。
どんだけボーッとしてんだ私。
そう思いながらも足は巧さんの家の方向へと進んでいて。
習慣と化したその行為に苦笑が漏れた。