幸せの残量─世界と君を天秤に─
「亜優美……」
「いや、そんな目で見ないで。大丈夫、ちゃんと優しいから」
……たぶん。
「もう、じゃあその優しい彼氏と一体何があったわけ?」
優しいを妙に強調された。
いや、気持ちは分からなくもないけど!
「えっと…」
それから柿崎に昨日の朝のことを話した。
話したって言っても、そんなに長いわけでもないし、すぐ終わったんだけれど。
取り敢えず聞き終わった時の柿崎は眉に寄せられた皺が残らないか心配してしまう程だった。
「ふーん…、理由を聞いただけなんでしょ?」
「まあ…」
「なーるほーどねぇ…」
何故かドヤ顔の柿崎。
え、なにこの子。もう解決するんですか。
流石。流石柿崎だ。お嬢様なだけあるよ!
「で、どうなんですかお嬢様」
「おじょ…?まあ、いっか。うーん…何となく分かったと言えば分かった」
「まじすか!なに……」
――コンコン
突如鳴り響いたノックの男。それから聞こえてきたのは、何やら聞き覚えがあるような無いような男性の声。