幸せの残量─世界と君を天秤に─
「あゆみ」
「柿崎…」
「確かに、家の離婚のことは亜優美とは無関係だよ。でもね、あたしもお兄ちゃんも……亜優美と無関係なわけじゃないでしょ?」
「、………」
「だからね、知ってほしいの。……亜優美は大事な友達よ。無関係なんかじゃないわ」
「……っ」
「分かるでしょ?」
どうして柿崎はこうも……。
いつだって、柿崎の言葉には優しさが含まれていて。
いつだって、私を光の方向へと導いてくれるような。
「かきざき…わたし……っ」
「はいはい、早く行きなさい」
そしてまた、私は柿崎を好きになるんだ。
「ありがとうっ」
今は何でか、巧さんに会いたい。
会いたいの。
「あ、亜優美ちゃん。送ってあげるよ」
急いで歩き出そうとして、裕司先生に呼び止められた。
「いいんですか?」
「走らせるわけにもいかないしね」
いつもみたいに爽やかに笑う裕司先生はどこか柿崎に似ていて。
やっぱり家族なんだなって実感した。