幸せの残量─世界と君を天秤に─
煙と不良は高い所が好きって言うし。
いっちゃん高い所にいる私が言うことでもないけれど。
煙草でも吸うのかなーと内心わくわくしながら見ていたら、何かフェンス乗り越え始めたよ。
…え、何してんの。
真っ青な空は、意外にも全てを呑み込んでしまいそうで。
「…ちょーい」
声をかけたら、何かが変わる訳でもないのに。
「そこの君」
不良くんはいきなり響いた声に驚いたのか、辺りをキョロキョロし出した。
誰もいないと思っていたのだろうか。
だとしたら、どこか抜けてる。
そんなことをする前には、確認するのが普通でしょう。
フェンスの向こう側の君は空に逆らうような赤なのに。
何故か、溶け込んでしまいそうなほど儚く。