幸せの残量─世界と君を天秤に─
「……本当にそれで良かったのか?」
「はい、これが良かったんです」
指にはまったゴールドリング。
あれだけ躊躇ったにも関わらず、いざ手に入れたらもう外したくない、なんて思ってしまう。
「…前見て歩け。転ぶぞ」
「まさかそんな。子供じゃないんですから」
「とか言って、ぶつかってコーヒーぶっかけたことあるくせに」
「……その節は本当、すみません」
でも今更そんな出会った頃の話しなくてもいいのに…!
心の中で抗議したところでどうにもならないのだけれど。
「……ったく」
「ぬおっ!」
「……」
急に絡まった指に、思わず変な声が出てしまった。巧さんの呆れた視線が痛いです…。
「…ばーか」
「うぅ…」
それでも
しあわせ、だった。
「……ほら、行くぞ」
「はーい」
幸せを与えてくれるのは、巧さん。他でもない、貴方。
「次はどこへ行くんだ」
「そうですねぇ…」
だけど
苦しくさせるのも、貴方にしかできないの。