幸せの残量─世界と君を天秤に─
「乙女の唇を何だと思ってるんですか」
「……ふっ」
鼻で…!鼻で笑いやがったよこの人!
「乙女、ねぇ…?」
「何ですか。文句ありますか」
「別に?」
…そんな顔で微笑まないでいただきたい。
意地悪そうに上がった口角が
されど優しく下がっている目尻が
妖艶に微笑むその顔に
思わず口付けてしまいそうにさせるから。
極めつけに、薄く口を開くものだから、吸い寄せられるように重ねてしまった。