幸せの残量─世界と君を天秤に─
今度は私が巧さんの手を引いて歩き出す。
人と人の間を縫ってぐいぐい引っ張っていく。
巧さんは文句を言うでもなくされるがまま。
むう……。
もやもやもや。
一層濃くなる心の暗雲にイライラしてくる。
「あゆみ」
「…はい?」
「落ち着け」
「……私は落ち着いてますが!」
「…どこが」
もうっ、もうもうっ!
一体誰のせいだと思ってるんですか!
……あれ。
そう思って、気付いた。
巧さんの…せい……?
もやもやを抱えたまま、黒い輝きを放つ車に乗り込んだ。