幸せの残量─世界と君を天秤に─
「じゃあ犬になるか?」
「意味がわかりません」
じゃあって何ですか。
選択肢おかしくないですか。
「躾てやるぞ?」
「遠慮します」
なんか巧さんが言うと洒落にならない。
「とりあえず此方へ来い」
「何がとりあえずかは分かりませんが、今日は気分が良いので行きましょう」
隣に座っていた巧さんの膝にのり腕の中に収まる。
……何故だ。今日は優しい。
いつもならこう、ぎゅうっと抱き締めてくるのに。
そうではなくて、
そっと、柔らかく包み込むように。