幸せの残量─世界と君を天秤に─
だって知らなかったんですもん
あれから、巧さんとは病院で擦れ違うようになった。
まあ、ここの先生だから当たり前なんだけれど。
「あ、巧先生。こんにちは」
「ああ、あんたか」
何故か名前で呼ばれたことはない。
え、お前なんか名前で呼ぶに値しねぇよ的な感じですか。
それはちょっと泣きそうです。
「……何変な顔してるんだ」
「ちょ、乙女に向かって変な顔って…」
……鼻で笑わないでいただけますか。