幸せの残量─世界と君を天秤に─
「っ、!!」
そのままこの醜い感情を叫び散らしそうになったけれど、私の中の変なプライドがそれをさせなくて。
けれど、口を開けば直ぐにでも鋭い言葉が飛び出しそうで。
私は抑えきれない気持ちを吐き出すように足に力を込めて部屋を飛び出した。
「亜優美っ!」
皮肉にも、初めて呼ばれたその名前に、期待していたような高鳴りは感じられなくて、
こんな状況じゃなかったらな、なんて考えた。
「…はあっ……!」
ドンッ
何度目だろうか。人にぶつかるのは。
けれど今度は巧先生じゃないことは解りきっていて、
乱れた息を整えることもせずに顔を上げるとそこには、
「────裕司先生…」
驚いたように目を丸くさせた裕司先生がいた。