幸せの残量─世界と君を天秤に─
「っ何してんの!」
突然響いた裕司先生の声に体がビクッと震えた。
「走っちゃ駄目だろ!?」
「…ごめ、んなさい」
「っ、診察するよ」
裕司先生に手を引かれて診察室に連れられそうになったとき、後ろから声が聞こえた。
どうして、
「──亜優美!」
どうして、この人の声は心地いいんだろう。
心は、こんなにも重く、潰れそうなのに。
「巧?」
裕司先生の声は、…聞こえなかった。