幸せの残量─世界と君を天秤に─
追いかけて、くれたんだ…。
「どうしたの」
「いや……」
何も知らない裕司先生が不思議そうに巧先生に尋ねる。
巧先生はそれに曖昧に答えるだけ。
私はというと、振り向くことも出来ずに背中を向けたまま。
「……亜優美」
そっと呼ばれた名前。
けれどそれに応えることは出来なくて、
私は裕司先生の白衣をギュッと握った。
「………巧、亜優美ちゃんこれから診察なんだ。じゃあまたね」
「あ、あぁ……」
私の様子を察してくれたのか、裕司先生は私の手を引いてその場を立ち去る。
正直ホッとして、だけれど何故か心が傷んだ。
それは巧先生への罪悪感からなのか、はたまた別の想いなのか、
解らなかった。その時は。