幸せの残量─世界と君を天秤に─
そんなこと、あり得ません
「………で?」
「………」
診察室に連れて来られたはいいけど、脈だけ測ってすぐに尋問が始まった。
「亜優美ちゃん?何で走ったの」
「……だって…」
「だって?」
だって、……何で?
あれ、何で私逃げたんだろう。
「…亜優美ちゃん?」
「……悲しかったから」
…だと思う。
「悲しかったの?」
「はい……」
巧先生が私の名前を呼んでくれなかったことが、
巧先生が他の女の子の名前を呼んだことが、
…寂しくて、悲しかったんだ。