幸せの残量─世界と君を天秤に─
「好き、なんです」
巧先生のことが。
たった一人の女の子の名前に、こんなにも嫉妬してしまうほど。
頭に優しい温もりを感じて顔を上げると、裕司先生の、その大きな手が私の頭に触れていた。
その顔はとても穏やかで、優しかった。
「裕司先生?」
「気付いたなら、行ってきな」
「……はい?」
何をいきなり言ってるんでしょうか。
「巧のところへ」
「無理です」
そんなこと、無理。
「亜優美ちゃん?この世に無理なんてことはないんだよ」
それは貴方に限ったことでしょうとは言えなかった。
裕司先生なら何でも出来そうに思える不思議。