幸せの残量─世界と君を天秤に─


「いいから……行きな?」


「行ってきます」


怖い。

わりと本気で。


私は診察室を早足で出ると、足取り重く休憩室へと向かった。


そこにまだ巧先生がいるかは分からないけど、でも、きっとそこに居るような。

そんな気がしたんだ。


「…呆れられたかな」


寝惚けてよく分からないまま、いきなりキレられて、心臓病のくせに走って。


あれ、私思ったよりやらかした?



「……行くの止めようかな」


そんなことを思っても、どんなに気持ちが沈んでいても、歩く足が止まらないのは巧先生に会いたいからなのか。



……乙女ちっく思考乙。









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