幸せの残量─世界と君を天秤に─


「巧先生…」


扉を開けた先には、待ち焦がれた貴方が。


無駄に鼓動がうるさくて、どうすればいいか分からないので、私は入口に立ったまま。

そしたら巧先生が「座れ」って言ってきたので、巧先生の目の前に座った。


投げやりな言い方だったのは、決して私に近寄って欲しくなかったわけではないと思いたい。



「………」


「………」


「………、」


気まずい。

座ったはいいけど、会話が一切飛び交わない。


や、でも私が押し掛けたんだから、ね。


「あの、巧先生」


「…何だ」


……、その眉間の皺は何なんでしょうか。


「ごめん、なさい」


「何に対して謝っているんだ」


何に対して?

そんなの……、


「…さっき、勝手にキレてしまったことです」


それと、避けてしまったことと

醜い嫉妬をしてしまったこと


でも一番は、好きになってしまったこと、ですかね。







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