幸せの残量─世界と君を天秤に─
「じゃあどうしたんですか」
「……お前のせいだ馬鹿」
私の?
………。
「それは責任転嫁ですよ。私、何もしてないじゃないですか」
巧先生が頬を赤くするようなことは、何も。
そう、──何も。
「………馬鹿」
「えっ!?何でですか」
その瞬間、巧先生はとても。
とても、美しかった。
「──だからお前は馬鹿なんだ」
「んっ……」
何が起こったか、解らなかった。
間近に見えるその綺麗な顔はぼやけていてしかし、それはどちらにせよ今の私には見えなかったかもしれない。