幸せの残量─世界と君を天秤に─
触れたか触れなかったか解らないほど、されど確かに重なったそれは、少し冷たくて。
私は目を見開いたまま、固まるしかなかった。
「大丈夫か」
「な、にを……」
「キス」
……きす?
きすって何それ。
何、なに…。
「うそ…」
「何が」
「何で……キス、なんてっ」
「言わなきゃわかんない訳?」
だって……、だってだって!!
「……あり得ない」
「あ?」
そんなの、あり得る訳がない。
唯一浮かんだ考えを直ぐ様振り捨てる。
「だってそんな……、そんなことっ」