幸せの残量─世界と君を天秤に─
『ダメ』
脳が警鐘を鳴らす。
期待はいらない。
そんなものは意味がないと知っているから。
傷付けるのは自分。
傷付くのも自分。
───想いは、伝えるだけで良かったのに。
伝えたいだけで、伝わるのは嫌だ、なんて笑えない我が儘だけれど。
「亜優美?」
「、」
私の様子を察してか、躊躇いがちに、けれど真っ直ぐ伸びてくる長く綺麗な指を私は、
受け入れなかった。
少し後ろに下がった私のせいで、行き場を失った指はゆっくりと元の位置へ。
端整な顔に刻まれた不機嫌な証すら愛しく思えてしまうなんて。