幸せの残量─世界と君を天秤に─


「大丈夫だから、落ち着け」


優しく、あやすように囁かれる。



「巧先生…」


相変わらず、涙は流れたままだけど、巧先生の声でほんの少し落ち着いた気がする。


私を包む温もりは、温かくて、優しくて、身体はそれを求めるのに。




ぎゅう

「え、?」



突然強くなった腕の力。

まるで、私の気持ちを読み取ったように。


……離れようとした、私を。



離さないように。


閉じ込めてしまうように。





< 93 / 217 >

この作品をシェア

pagetop