幸せの残量─世界と君を天秤に─


「……こわいんです」


「ん」


私は、こんな身体だから。


「いつか、失うんじゃないか、って…」


この手から放れて行ってしまうんじゃないかって。


「…だから、幸せを失うくらいなら、最初から持たなければいい」


そう、思ってたんです。



「あんたって本当に馬鹿」


「うっ…」


巧先生の言葉がグサッと……。



「何も考えるな」


「……、はい?」



「手に入れる前に失うことを考えるなんてネガティブ過ぎるんだ」


「……ぐすん」

分かってますよーだ。
でも、不安なんだもん。



「何が離れて行くって?」


「しあわせ……」



だって幸せが大きい程、無くした時の悲しみは大きいでしょう?







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