フラワーデイズ
ようやく迷子センターの看板が見えてきた。

「葵!!」

「ママ!!」

私は小さな葵の体を、壊れそうなくらいギュッと力強く抱きしめた。

迷子センターにはパパの姿もあった。

「ママ…悪かった。俺がちゃんと葵の手を握っていなかったから」

「もういいわ。無事に葵が見つかったんだから」

もう一度、葵を抱きしめる。

「いや~、おたくのお嬢さんは立派ですね~」

迷子センターのロゴが入ったジャンバーを着た、おじさんが微笑みながら言った。

「自分からここに来たんですよ」

「えっ?自分から?」

葵が自分から迷子センターに来たってこと?

その意味を理解するまで、少々時間がかかった。

まさか5才の葵が自分からここに来るなんて。

信じられなかったと同時に、自分の娘が賢く思えた。

「葵、お前凄いな~」

パパが葵の頭を優しく撫でる。

でも、葵は嬉しそうな顔をしていない。

泣いてもいないし、笑ってもいない。

「でも、ここに来た理由がちょっと不思議な理由でしてね」

迷子センターのおじさんは困ったような苦笑いを見せた。


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