フラワーデイズ
「えっ?どういうことですか?」

私はおじさんに聞き返した。

パパも私と同様の疑問を頭に浮かべただろう。

葵は俯いて、何だか悲しそうな顔をしている。

「お嬢さんねぇ…蜂が見たかったらしいんだ」

「蜂…ですか?」

今度はパパが聞き返す。

私は葵と同じ高さに目線を合わせて、その意味を尋ねた。

「ねぇ、葵。葵はハチさんが見たかったの?」

私の質問に葵はすぐには答えてくれなかった。

少しの間を置いて、葵が小さい声で言う。

「葵ね…ミツバチ君が見たかったの」

「ミツバチ君…」

この時見せた葵の表情が私の胸を締め付けた。

動物園に蜂はいない。

違う動物園に行けば、蜂を置いているのかもしれないが、少なくともここの動物園に昆虫のコーナーはない。

「あのね、ここにミツバチ君はいないのよ」

「でも、ママ言ったもん。みんないるって」

動物園に来た時の会話を思い出す。


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