フラワーデイズ
この時、葵が言った“みんな”の中にはミツバチ君も含まれていたのだ。

確かに私はみんないると言った。

でも、まさか蜂のことを聞いてるなんて考えもしなかった。

葵の瞳には涙が溢れている。

迷子になっても泣かなかったのに、私の言ったことが原因で泣かせてしまうなんて。

「ごめんね。でもね、ここじゃ、ミツバチ君には会えないの」

「………」

葵は顔を背けて何も言わなかった。

パパに視線を送っても、しょうがないといった顔をしている。

私たちは迷子センターを出て、また動物たちを見ることにした。

でも、葵はちっとも楽しそうじゃない。

「ほら見て、葵!ウサギさんよ!可愛いね!」

「…うん」

「葵!向こうにママみたいな猿もいるぞ!」

「…うん」

私とパパがどんなに明るく話しかけても、葵の機嫌が直ることはなかった。

私が持ってきた手作りのお昼ご飯を食べても…

帰りにぬいぐるみを買おうと言っても…

『ミツバチ君じゃなきゃ嫌』と言い張って、一度も笑顔を見せてはくれなかった。

せっかくの誕生日なのに私は葵から笑顔を奪ってしまった。


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