フラワーデイズ
行きの明るい感じとは裏腹な帰りの車内。

葵は後ろでぐっすり眠っている。

「何だか可哀想だわ。今日は葵の誕生日で、葵に楽しんでほしくて動物園に連れてきたのに」

「しょうがねぇよ。だって、普通に考えて動物園に蜂はいないからな」

「そうだけど…」

「来年の誕生日は昆虫博物館にでも連れて行くか?」

パパがニカッと笑って言った。

その冗談を聞いて、少し気が楽になる。

「やめてよ。葵が見たいのはアニメの可愛いミツバチ君よ。本物の蜂の標本なんか見たら泣き出しちゃうわ」

「でも、生のヘビ見て喜んでたぞ」

「それはパパの変な遺伝子が葵にも!っていうか、ヘビの話はやめて!」

私のヘビ拒絶反応を見て、パパが楽しそうに笑いだした。

パパに感謝しないと。

パパが変な冗談を言ってくれなかったら、私きっと家に着いてからもへこんでたかも。

「パパ」

「あ?何だ?」

「好き」

自分で言った言葉に恥ずかしさを感じて、私は窓の外に視線を移した。

耳が熱くなっていくのが分かる。

「今朝、口にチューしてくれなかったのにか?」

パパがニヤニヤ笑って言う。

私は一言パパに言って、それからはずっと寝たフリをしていた。

「今日の夜にね」


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