フラワーデイズ
貴之の後ろには菜々子もいた。

菜々子も私とパパの大学時代の友人だ。

「菜々子、来てくれたんだ」

「快から招待の電話が入ったのよ。2時間くらい前かな?面白いものが見れるからって」

2時間前と言えば、動物園の帰りになる。

たぶん、私が寝ている時にパパが連絡したんだろう。

貴之が家の中に入ると、パパにも笑いの嵐が襲ってきた。

っていうか、パパの場合は大爆笑の嵐だった。

「やっべ〜!貴之、お前マジ笑えるわ!」

「お前がこの格好しろって言ったんだろうが!」

パパと貴之はビールを飲み始めた。

貴之はミツバチ君の格好のままで。

「えっ?どういうことなの?」

私が聞くと、貴之は一口ビールを口に運んでから、この格好をするはめになった事情を説明しだした。

「家で暇してたら急に快から電話が来たんだ。『葵が大変なんだ!今日の夜、うちに来てくれ!』って。スッゲー慌てた様子でさ」

それも私が車で寝ている時だろう。

貴之はまたビールを飲んで、話し続ける。

「しかも『おもちゃ屋でミツバチ君っていうキャラクターの衣装買ってこいよ!ちなみに子供と大人のセットのやつだからな!』って言うんだぜ」

私と菜々子はその話をニヤニヤ笑いながら聞く。

パパはと言うと、葵を膝の上に乗せてビールをガブガブ流し込んでいる。

葵は貴之のミツバチ君姿に上機嫌な様子だ。

「俺、何言ってんのか意味分かんなくてさ。しかも、ミツバチ君なんてキャラクター知らねぇし。でも、いつも冷静な快がこんなにも慌ててるのは、一大事だ!って思って」

「それでそれで」

楽しくなってきた私は、話しの続きを催促する。

「仕方なく、おもちゃ屋に行ってこの衣装を買ってきたわけ。それで快に買ったっていう報告をしたら…『じゃあ、それ着てうちに来てくれ』って言ったんだぜ!ありえねぇだろ!」

アンタは今そのありえねぇ衣装を着て、うちでビール飲んでるんだけどね。
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