フラワーデイズ
僕は静かに立ち上がって、窓を開け始める。

窓が開いた瞬間に冷たくも温かくもない、例えて言うなら、爽やかな風が吹いた。

もう5月も終わるな。

ふと、そう思った。

「…で、その話っつーのが…」

僕は1ヶ所だけ開けると、ヒデに背を向けたまま話を聞いた。

髪の毛や肌をかすめる風が気持ちいい。

窓の下に広がる茶色いグラウンド。

その横には鮮やかな緑色の木々たち。

なんだか僕と同じ感情を抱いて揺れているように見える。

「昨日の夜、出たんだって…幽霊が…」

僕は首だけでヒデを振り返った。

本当に怪談話するのかよ…

「ほら、野球部って帰り遅いだろ?昨日も帰ろうとしたらもう9時過ぎてたみたいでさ。幽霊が出たのはその時らしいんだ」

ヒデは勝手に1人で盛り上がっちゃっている。

僕は体を正面に向け、仕方なくヒデの話を聞くことにした。

「それでどんな現象が起きたの?グラウンドを下半身だけの人間が走ってた?それとも廊下を火の玉が飛んでた?」

「それがなぁ…事件はグラウンドでも廊下でもなくて、ここ…音楽室で起きたんだ」

事件って…ヒデは刑事ドラマの見すぎだよ。

しかも、そのドラマもう何年も昔のやつだしね。

っていうか…ここ?
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