フラワーデイズ
1階から「ミツバチ君~!」とラブコールを送る葵の声が聞こえる。

「ほらね?」

「だな」

「さぁ、私たちも行きましょう。朝ご飯食べなくちゃ」

「ママ」

真っ直ぐ見つめてくるパパの瞳。

頭はボサボサなのに、それを忘れさせるくらいに整えられた綺麗な顔立ち。

うちのパパは近所でも評判のイケメンパパである。

そんなイケメンさんに真剣な眼差しを向けられて、私はなぜか緊張感を抱いた。

艶やかな漆黒の髪に、それと同様な彩りを持つ吸い込まれそうな瞳。

その容姿はどこか遠い国の王子様といった感じに見える。

「ママ、お目覚めのチューして」

王子様から突然チューの要求がきた。

どうやら王子様は少し甘えん坊なところがあるようだ。

「な、何言ってんの?!もしかして寝ぼけてる?!」

「あぁ、そうかもしれない」

「冗談言ってないで早く下におりるわよ」

私の顔はきっとユデダコみたいな色をしてたと思う。

と、言うか…実際に寝室のドレッサーの鏡に映った自分の顔は、これでもかという位に真っ赤に染まっていた。

パパがからかうようにニヤニヤ笑う。

パパには昔からこういう一面があった。

「ママにもチューを拒まれたら、パパはショックのあまり今日1日中寝ることになるかもしれないな」

「そ、それは困るわよ。だって今日は…」

そう今日は私たち家族にとって大切な1日なのだ。

1年に1度の大切な日。


< 4 / 30 >

この作品をシェア

pagetop