フラワーデイズ
私は仕方なくパパの頬に軽くキスをした。

キスと呼べるかどうか微妙な程度の軽い口付け。

それは唇が一瞬、肌をかすめる程度のものだった。

でも、もう何回もしているはずのその行為が、何だか急に私を恥ずかしがらせた。

「口にはしてくれないのか?」

「バカっ」

楽しそうな笑みを見せるパパに、私はそう言い放って、葵のいるリビングへと降りていった。

「ミツバチ君!」

リビングにいる葵は相変わらず、ミツバチ君に釘付けになっていた。

真っ白なソファーに座って、目を大きく見開いてミツバチ君を見ている。

その目はお星様のようにキラキラ輝いている。

この視線がいつかは男の子に…

そうなると、パパはまたショックを受けるんだろうな。

その顔が想像できて笑いがこみ上げてきた。

「葵、ご飯とパンどっちがいい?」

「ミツバチ君!」

いや…ミツバチ君はどんなに可愛くても蜂だから。

ママ、あなたにそんなの食べて欲しくないわ。

「じゃあ、ご飯でいいわね?」

「ミツバチ君!」

「…ご飯で決定」


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