フラワーデイズ
動物園に着くと同時に、葵のテンションは急上昇した。

私の腕を引っ張って、今にも駆け出しそうな勢いだ。

「ママ!あっちにキリンさんがいるよ!」

「そうね。キリンさんもゾウさんもライオンさんもいるわよ」

「みんないるの?!」

「えぇ、みんないるわ」

葵の嬉しそうな顔を見ていると、本当に子供は可愛いものだと再認識させられる。

それと同時に、いつの間にか母親になっている自分に気付く。

「ママ早く行こう!ほらパパも!」

「葵、そんなに急がなくても動物は逃げねぇから安心しろ」

「時間はたっぷりあるんだから、ゆっくり楽しみましょう」

ポカポカ陽気が私たちを包み込む。

手を繋いで歩く3人の親子は、周りから幸せな光景に見えているだろう。

自分の右手に繋がれた娘の手はとても小さく、自分にもこんな時代があったのだと、過去の記憶を思い返す。

「ママ」

「ん?何?」

ふと、パパに呼ばれて顔を見る。

パパは私の方に顔を向けると、その完璧な容姿で微笑んで言った。

「幸せだな」

「パパ…」

葵を出産した時の映像が脳裏に浮かんでくる。

あの時、交わされた約束──

「うん」

パパ…約束守ってくれてありがとう。


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