Departure
―ドクン
奇妙な音。気のせいではなかった。これは確かにあの時の―……
次の瞬間、蒼は無意識に彼女をエレベーターの外へ突き飛ばしていた。
「高野くん!!」
互いの顔も見えないほどの高速で蒼の体は落下していく。
消えた蛍光灯。真っ暗で、吸い寄せられる。
あぁ、そうか。うっかり忘れていた。これはただの事故ではない―
蒼を乗せたエレベーターは、一瞬にして深い闇へ堕ちていった。
例えこのまま朽ち果てても、俺はあいつの元へ行かなければいけない。
―絶対に。