Can laugh sometime
野菜コロッケ
毎週金曜日の8時、
俺は駅の路上でギター片手にライブをする。
「売れっ子歌手になってガッポガッポ儲かってやる」と豪語し上京して5年。
「歌手」という目標は夢というか趣味程度にまで格下げになってしまった。
それでも「歌手」の夢を捨てられずにいる俺が居た。
【野菜コロッケ】
バイトが終わり家に帰ると電話に留守番が入っていた。
疲れた体を無理やり動かして靴を脱ぎ捨て電話へ向かった。
ボタンを押すと聞き覚えのある声が録音されていた。
「……元気にしてんか?心配しとるきに。明日あんたの家訪ねに行くき…」
母さんの予期せぬ言葉に俺は大きく深い溜め息をつく。
俺をガキ扱いしやがって過保護なんだよ。
そんな事を思いつつ俺は深夜2時にも関わらず部屋の掃除をし始めた。
ドンドン
ハッと目を覚ますと時計の針は13時を差していた。
やっば、いつの間に寝てたんだ…
まだ覚醒してない頭をフル回転させ音のする玄関へ向かった。
ガチャリと古びた木製の扉を開けると少し小さくなった気のする母さんが荷物をかかえ立っていた。
「久しぶりじゃき、祐樹」
「ま、母さん中入って」
母さんはくしゃっと笑いすぐ台所へ行った。
「ちゃんと料理してんろ?」
「…たまに」
「いつまでバイト生活しちゅう」
「…その内ちゃんと仕事探すよ」
来てそうそう説教続き。
はいはいと軽く話を流しながら青色のカーテンと窓を開ける。
母さんは持ってきた袋から色々取り出し何かを作ってるようだった。
今日はバイトは休み。これも久しぶりだ。
しかも金曜日。ギターの手入れもしなきゃと思っていたのだが深夜まで続いたバイトと掃除のせいですぐ睡魔が襲ってきた。
今の俺が睡魔に勝てる訳もなく瞼を静かに閉じた。