【短編】じゃんけん王
しかし和紀も負けてはいられなかった!
数々のプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、ひとつ又ひとつと乗り越え、その度に自信をつけて、やっとここまでやってきたのだ!
ここで負ける訳にはいかないと、心の底から強くそう思えた時、初めて3万人強の観客の顔が、一人一人はっきりと確認できた!
そして準備が整い、アナウンサーの声が東京ドームの観客を煽った!
和紀は相手が小さな子供だと思って勝負するつもりはさらさらなかった!準決勝まで勝ち進んだその運と実力を認め、大人以上の相手として、心して勝負に挑んだ!
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決定
(*相手は、、、、、の変則出しの後、何を出しても負け)
(負けパターン)
その小さな女の子はもう一度、じゃんけんの右手を出した!
一回限りの勝負の意味を理解していなかった。
お母さんに勝った事をつげられると又ニコニコしながら和紀にも微笑みかけた!
和紀のじゃんけんゲームはついにここで終わりを告げた。
現実は夢からのバトンを、次へとつなぐことが出来なかった!
東京ドームの回転扉に押し出された和紀は、名残惜しさに思わず振り返った。
そしてその回転扉が回る度に何度も写し出される茫然とした自分の姿を見た時、自分が自分ではなかったような奇妙な感覚にとらわれた!
FIN