【短編】じゃんけん王

ドーム決戦7回戦


太った女性が檀上に上って来た…
と思ったが、性別は男性であろうと思われた!
もっと近くで見ると、はっきりと違う組合の方と認識できた。
ニコッと笑いながら握手を求めてきたので、ドーム初戦の時とは少し異なる引きつった笑顔で、握手を交わした。その刹那、纏わり付くような視線を感じ、恐る恐る顔を上げると、うっすらと青色に変化した口の回りを舌なめずりしながら、和紀の全身を舐めるように見つめていた!



[→]___
     決定

(*相手はの繰り返し)



(負けパターン)

和紀は全身が鳥肌になっていくのを感じ、文字通りチキンになってしまった!
彼(女?)はじゃんけんを出したその手のこぶしをさらに強く握りしめ、ライオンキングのような雄叫びをあげながら、大きく右手を突き上げた!


和紀は敗者復活戦にも呆気なく敗れ、じゃんけんゲームはここで終わりを告げた。もっと最後まで残れる予感がしていたのだが…

東京ドームの回転扉に押し出された和紀は、名残惜しさに思わず振り返った。
そしてその回転扉が回る度に何度も写し出される茫然とした自分の姿を見た時、自分が自分ではなかったような奇妙な感覚にとらわれた!



FIN



(勝ちパターン)

和紀は悪寒が走り、全身鳥肌になるのを感じながらも、決してチキンにはならなかった!
そして彼(女?)は、そのごつごつした手が負けを告げた時、男性の野太い声で悪態をついた!





和紀はその後も勝ち進み、11回戦まで何とか乗り切った。

100万人から、ベスト16人まで進んでいた。

緊張の度合いがどんどん増して、喉がカラカラになっていた が、ちょうどいいタイミングで、大会のために雇われたであろうキュートな服装のジャンケンガールが、微笑みながらお茶とコーヒーとスポーツドリンクをトレーに乗せ、やってきた…
やはりベスト16まで進むと扱いが違うのか、和紀は少し恐縮しながらも気取って会釈をすると、
『…頑張って下さい』と、けっして社交辞令的ではない、好意あるその一言に優越感を感じ、良い気分で美味しいコーヒーを味わった。

そして、ひと時の休息を終えると頭をすぐに切り替え、次の12回戦の相手に照準を合わせ、戦況を見つめた!
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