オトナな初恋
『一眠りしたら帰っても良いから。とにかく今は休むんだ。
僕は仕事があるから会社に戻るけど、帰って来るまで大人しく寝てて。
勝手に出て行けない様に桜井さんの鞄、僕が預かって置くから。』

「か、鞄?」

私の問いかけに答えず木下常務は寝室を出て行った。




鞄がないと…鍵も財布もない。家に帰れない。
やられた…
木下常務が帰って来るまでここから動けない。


熱のせいかどうすればいいのかうまく考える事もできない。



いつの間にかまた眠りについてしまった。

















バタン



ドアの開く音で目を覚ます




木下常務が帰って来た?


あれからずっと眠っていたの?
ゆっくりと体を起こして立ち上がる。



少しだけ怠さが残ってるけど、頭痛も消えていて、随分とラクになった。



これなら、家にも帰してもらえる。
そう思って、寝室を出ようとドアに手をかけた時だった。





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