オトナな初恋
『あれ?桜井さん…今日から来るって部長から聞いてはいたけれど、まだ残ってたの?』
仕事をしながら拓海さんを待っていたけれど、戻って来たのは木下常務だけだった。
「会議お疲れ様でした。あの木下常務おひとりですか?」
『拓海は、会議室の鍵かけて、守衛に渡してから戻ってくるよ。』
「そうですか。木下常務、こないだの話なんですけど…私は雄太君のお母さんにはなれません。」
『答えは急がないで。きちんと考えて欲しいんだ。』
「どれだけ考えても答えは代わりません。」
『どうして?』
「それは、私が木下常務に恋愛感情を持てないからです。私は拓海さんが好きなんです。」
言いきった私に木下常務は小さく、笑った。
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