オトナな初恋
車に乗っても俯いたままの私。





静かな車内。




何も聞いて来ない早坂主任。





聞かれても、どう話せばいいの?









車が止まる。


少し顔を上げて外を見ると、そこは、どこかの駐車場。



『降りて。』



いつの間にか、外にでた早坂主任が、助手席のドアを開けて、降りるように促す。



鞄と荷物を持って降りた私の手を引っ張り、歩き出す。


見覚えのある通りにでて此処がどこかわかった。


この道…朝通ったもん。


角を曲がり目的の建物が見えた。




早坂主任の住んでるマンション。



足が、止まる。



下を向いてても、振り向いて私を見てるのが気配でわかる。



『来て。頼むから…。』


少し声が震えた気がして顔を上げた。




目の前には、悲しげな顔をした早坂主任の姿があった。


私と目が合うと、しばらくそのまま私を見つめて、また前に向き直り、歩き出した。
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