眠たげな猫と私
退屈そうな猫と私
「鳴け」
「は?」
「にゃあって」
「……そういう趣味だったのか」
「気持ち悪いこと言うな」
一限の数学には居たはずなのに、いつの間にか消えたアイツを探して私は屋上まて来た。ていうか、ここ立ち入り禁止だったはずなんだけど。
ごろごろと寝転がる猫、元井啓は私の彼氏だったりもする。何で私はこんな奴と付き合ってんだろう。友達からメールで紹介してもらって、何となく暇だったから電話するようになって、メールで告られて、まあいっかみたいなノリで付き合った。
理由は顔だけはそこそこ良かったから。友達にそう言ったら爆笑されたけど。お前だって面食いだろーがって思ったけど。
人工的な明るめの茶髪が風でゆらゆらと靡いている。
「ね、教室戻ろうよ」
「なんで」
「……なんとなく?」
「俺は、なんとなく戻りたくなーい」
「単位落として留年しちゃえ」
そう言いながらも、ちゃっかり隣に座ってる私が居る。啓は馬鹿だし、将来のこととか考えてなさげだし、女にだらしない。良いとこなんか探すだけで疲れる。
だけど一緒に居ると気楽。
そこそこイケメンは大好きだ。
そこそこの付き合いが出来るから。
すっごいイケメンはアレだ、観賞用。アイツらはこっちも必死にアイライナーとか使って顔を詐欺らないと隣歩けないし。
そこそこイケメン代表の啓とは適当にキスしてヤって、そのまま自然消滅しても何とも思わない。
それくらいの男だし。
「あー、ねっむ、」
「昨日寝てないの?」
「昨日はアレだ、なんかしてた」
「なんかってなに」
「なんか」
「……寝てないのか」
「寝てねー」
馬鹿じゃん。
退屈そうな猫は、ふわあって欠伸をした後、茶色のカラコンをしたまま、瞼を閉じた。コンタクトしまま寝るなよ。
授業開始のチャイムが鳴ったけど、私は腰を上げる気になれず、隣で眠る猫の寝顔を見つめた。
写メってやろうか。