雪の音




 奈々ちゃんが教室を去ると急に教室内はシ~ンとする。


奈々ちゃんが来るまでは私1人だったのに、なんだか、急に1人が寂しくなっちゃう。


いつも思う。


雪が降った日。


積もった日は、すべての音が静まり返っているように思う。


なんだか、この場所にいるのは自分1人だけじゃないかって………。


下を見ると、まだ笹野くんは雪合戦に夢中。


たぶん、彼はここで自分を見ている人がいるなんて、思ってないんだろうな。


笹野くんという人はそういう人。


クラスのムードメーカーでお祭り好き。


さわやかで誰にでも優しい人。


だから、みんなが笹野くんのことを好きになる。


私もその1人………。






 私は笹野くんの机に触れる。


この席にいつも笹野くんは座って、友達と話して、真剣に黒板を見て………そういえば、1回だけ、居眠りしてて先生に怒られてたことがあった。


私はその時のことを思い出し、思わず笑ってしまう。






 私はあることを思いつき、教室のドアのほうへと小走りで走っていく。


ドアから顔を出し、廊下に誰もいないことを確認した後、私は静かに教室のドアを閉めた。


その後、みんなの机に鞄が残っていないかチェックする。


既にHRが終わり、時間が経っているということもあり、誰の鞄も残っていなかった。


残っているのは私の鞄だけ。


私は、笹野くんの机の椅子を引くともう1度周りを確認してから、椅子に座った。


他人の椅子に座るのってこんなにドキドキするものなのかな?


誰かが見ているわけじゃないのに、変な汗が湧き出てきそう。


だけど、すごくうれしい気持ちもある。


私は今、笹野くんの席に座ってるんだ。


ここで笹野くんは黒板を見て、ノートを取って、笹野くんの景色はここから始まってた
んだ。


そして、彼が今まで見ていた景色を今、私が見ている。


すごく温かい気持ちが私の胸を駆け抜ける。


私は机の上に手を置き、その上に頭を置いた。

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