雪の音
目を閉じれば全てのことが思い出される。
はじめてあなたを好きになった日のこと。
言葉を交わした日。
あなたの1つ1つの仕草にドキドキさせられたこと。
そして………。
あなたに彼女ができて、思いっきり泣いたこと。
全部が全て思い出になるんだろうか。
あなたのことも、昔のいい思い出として私は処理してしまうのだろうか。
こんなに、今でも大好きなのに………。
私は静かに目を開け、もう1度、深く瞳を閉じた。
彼、笹野翔太(ささのしょうた)くんと私、松宮凛(まつみやりん)の出会いは高校の入学式から始まった。
親と一緒に来ていた私だけど、トイレに行くために体育館から1人で出てしまったのが大きな間違いだった。
校舎の中でトイレを探し、済ませた後、いざ体育館に戻ろうとした私は校舎の中で迷ってしまう。
それも、体育館に続く扉がさっきまで開いていたというのに、今では閉まっていたことが迷ってしまう原因だったのだ。
来たばかりで全く知らない私は、あまりのことにほとんどパニくっていたと言っても過言ではない。
「ど、ど、どうしよう~………。え~っと、とにかく一旦外に出てそれから回って体育館に行って」
普通に行けば、迷うはずなど全くない。
だけど、冷静ではない私はそれだけのことがとても大変なことのように思われたのだ。
きょろきょろと辺りを見回しながら、恐る恐る歩く私。
きっと、すごく不審人物のように見えただろう。