雪の音
「あの………」
心細く歩いていた私はピクリと体が震える。
「は、はい!!」
声は大きかったが震えていたと思う。
それでも、私は声がかかってきたほうを振り返る。
そこに立っていたのが笹野くんだった。
「どうしたの? さっきから、とても不安そうに歩いてるから………もしかして、迷った?」
私はほとんど半泣き状態でコクコクと頷いた。
「そのネクタイの色からして新入生だろ。そりゃ、迷うよな………」
上級生なんだろうか………。
私は彼の顔を思いっきり見た。
「あの………。すみませんが、体育館までの道筋教えてもらえないでしょうか?繋がっているはずの渡り廊下の扉が閉められてて………」
「いいよ。俺も戻るところだったし」
彼のとびっきりの笑顔。
私は絶対に忘れることはなかった。
今までの不安など吹き飛んでしまいそうな笑顔だった。
そして、私は彼の笑顔に心を奪われてしまった。
その時は気づきもしなかっけど、後から思うと、私はすでにあの時から笹野くんのことが好きだったと思う。
「1つ聞きたいんですけど、もしかして、同じ新入生なんですか?」
私の素っ頓狂な質問を聞いて彼は思いっきり笑った。
「えっ!? 俺、同級生に見えない? もしかして、ふけてる?」
「いや………そういう意味では……。しっかりしてるから、その………」
しどろもどろな言い方の私を見て、彼はまたも笑った。
「冗談冗談。おもしろいね。君」
そう言われながら、私たちは体育館にたどり着いた。
「ありがとうございます!」