雪の音





 「あの………」


心細く歩いていた私はピクリと体が震える。


「は、はい!!」


声は大きかったが震えていたと思う。


それでも、私は声がかかってきたほうを振り返る。


そこに立っていたのが笹野くんだった。


「どうしたの? さっきから、とても不安そうに歩いてるから………もしかして、迷った?」


私はほとんど半泣き状態でコクコクと頷いた。


「そのネクタイの色からして新入生だろ。そりゃ、迷うよな………」


上級生なんだろうか………。


私は彼の顔を思いっきり見た。


「あの………。すみませんが、体育館までの道筋教えてもらえないでしょうか?繋がっているはずの渡り廊下の扉が閉められてて………」


「いいよ。俺も戻るところだったし」


彼のとびっきりの笑顔。


私は絶対に忘れることはなかった。


今までの不安など吹き飛んでしまいそうな笑顔だった。


そして、私は彼の笑顔に心を奪われてしまった。


その時は気づきもしなかっけど、後から思うと、私はすでにあの時から笹野くんのことが好きだったと思う。


「1つ聞きたいんですけど、もしかして、同じ新入生なんですか?」


私の素っ頓狂な質問を聞いて彼は思いっきり笑った。


「えっ!? 俺、同級生に見えない? もしかして、ふけてる?」


「いや………そういう意味では……。しっかりしてるから、その………」


しどろもどろな言い方の私を見て、彼はまたも笑った。


「冗談冗談。おもしろいね。君」






そう言われながら、私たちは体育館にたどり着いた。


「ありがとうございます!」


< 5 / 11 >

この作品をシェア

pagetop