雪の音
私は何度も頭を下げた。
「もういいって! 大したことなんてしてないんだからさ。それより、早く戻らないと親が心配するんじゃねえの?」
「あ………」
私はお母さんが待つ席へとちらりと視線を向けた。
確かに………。
彼が言ったことはもっともだった。
「じゃあな………」
それだけ言うと、彼は私のお母さんが待つ席とは遠く離れた場所へと走っていく。
それで、わかってしまった。
彼と私はクラスが全然違うのだと………。
少し、残念に思いながら私は、お母さんが待つ席へととぼとぼと歩いていった。
あの時、どうして残念な気持ちを思ったのか、その時の私には思いもよらなかった。
私のクラスは1組。
笹野くんのクラスは7組。
同じ学年でも教室は別の階にあった私たちの学校。
もちろん、会うこともなくなり、私たちは名前も知らないまま数ヶ月が過ぎていた。
私はクラスに馴染み、奈々ちゃんという親友もできた。
笹野くんのことも、忘れかけていたその時。
私たちは偶然にもお互いのことを知る機会を持ってしまう。
あの時、あのことがなければ、私はきっと、あなたのことを忘れて好きになることもなかったと思う。
忘れかけてしまっていた私の気持ちが蘇ることなんてなかった。
あの日。
あの日がなければ………、きっと、こんなつらい思いをすることなんてなかったんだ。