【キセコン】とある殺し屋の一日
「ああっ! よいっちゃん!! 今日お祭りっ!!」

いきなり上がった素っ頓狂な声に、与一は危うく体勢を崩しそうになった。
ガゥン、と飛び出した銃弾が、明後日の方向に飛んでいく。

「何なんですかっ!!」

噛み付く勢いで言う与一にも、藍は動じない。

「お祭りじゃない~っ! ほらっ! こうしちゃいられないわっ!! さっさと行かなきゃ!」

ぐいぐいと与一の袖を引っ張りながら、藍が京処(みやこ)のほうを指差す。
この墓場は、少し小高い丘になっているので、遠く京処の中心部を望むことができる。

が、与一が京処を眺めてみても、祭りがどうとかまでは見えない。
一体どんな視力なのだ。

「藍さん、訓練はいいんですか? 祭りっつっても、藍さん、そう食わないじゃないですか」

「あたしが食い意地張ってるみたいに、言わないでよね~。お稲荷さんの屋台があるはずなんだもん」

やっぱり食い物じゃねーか、と思いつつ、与一は結局エンフィールドを懐にしまい、藍に引っ張られて京処に駆け戻った。
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