【キセコン】とある殺し屋の一日
思えば毎度毎度、このように生産性のない会話をしている。
内容も、幼子と話すのと変わらない。

ふと傍を通りかかった風車売りが、藍を見上げた。

「おんや、可愛らしい子だ。お兄さんかい? どうだい、風車、いらないかい?」

言いながら、一本の風車を藍に差し出す。

---おっさん、この人、そんな幼くねぇんだよ---

心の中で思った途端、藍が受け取った風車で、さりげなく与一の後頭部を、ごり、と引っ掻いた。

「あいてっ」

「可愛いわねぇ。ねぇよいっちゃん、これ買って」

にこにことねだる藍に、風車売りも満面の笑みを与一に向ける。
与一は懐から出した小銭を、風車売りの手に乗せてやった。

「・・・・・・そんなもん欲しがるなんて、お嬢さんは、一体いくつなんです」

風車売りが遠ざかってから、与一はぼそりと呟いた。
少なくとも、あの風車売りには、そういうものを欲しがる子供に見えたということだ。

「考えてみれば、不気味ですよねぇ」

「なぁんですってぇ??」

与一の呟きに、背中の藍がいきり立つ。
足をばたばたさせているのは、抗議の証だろうか。
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